通訳案内士の仕事は外国語ができればバイトでもできる??
通訳案内士免許を取得したばかり、もしくは今現在通訳案内士試験に向けて勉強中の方でまだご自身の経験のなさに自信が持てない、実際に資格を取得する前に実際にどんな仕事をするのか知りたいとアルバイトから始めてみようかな...なんてお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、求人情報検索をしてみても「通訳」のバイトはでてくるのに「通訳案内士」ではヒットしない...その理由は単純に外国語ができればいい、というだけの仕事ではないからです。
通訳と通訳案内士の違い
外国語を使う仕事の代表的なものといえば、パッと頭に浮かぶのはおそらく「通訳」ではないでしょうか。通訳案内士も「通訳」という名前がついていますが仕事内容としては全くの別物です。
まず、通訳の仕事は外国語⇆日本語を正確に訳すこと。
相手の言葉を確実に理解し、一言一句聞き漏らさずに言葉の使われ方、文化的背景も考慮しながら忠実に訳す!余程のほどの訓練が必要なんだろうということが容易に推測でき、考えただけでもクラクラします...。
プロの通訳の仕事も「外国語を話せる」なんて程度ではない務まらないことはよくわかりますが、訓練を積むことで比較的仕事に結びつきやすいのではないかと思います。
そして私自身経験があるように「英語が話せるなら通訳として同行してよ」なんて声がかかったりするので「ちょっとした和訳/外国語訳が必要な場合」に気軽なアルバイト感覚でお願いされることも多いのが通訳の仕事だったりします。
ところが通訳案内士になると仕事は「完璧に訳す」ことではなくなります。
何かを説明する場合には「自分の言葉」で伝えることが必要だからです。まず自分の頭の中で説明内容を十分に理解し、自分の持っている英語力でお客様に伝わりやすいように説明します。
今ではネットの普及もあり、観光名所の多くは外国語でもすぐに歴史や詳細を調べることができます。日本人向けの観光ガイドブックにも多くの情報が載っています。とはいえその内容をそっくりそのまま私達が訳しただけではダメなのです。もちろん、それだけでは情報が足りない、と言うこともありますが、私たちが説明する内容は自分が噛み砕いて、補足を加えながらお客様が理解できる話になっていなければいけません。
特に私のようなFIT(個人旅行者)専門の場合、お客様の日本文化への理解度や興味によって話し方を変えることが特に重要になってきます。お客様が日本に関しての専門家である場合もあるでしょうし(実際過去のお客様に源氏物語を研究されてる方がいました。私は全巻読んだことすらありません...)、全く日本の知識をお持ちでない方かもしれません。個人の知識レベルに応じてお話を進めていかなければ話を聞いていても面白くないのですね。
また、常にお客様は自分では知りえなかった情報を求めているので「新しいことを学べた」という充実感が多いほどガイドに対する満足度も変わってきます。一般的な通訳とは違い、自分の個性や知識も出して独自のガイディングができることが大いに求められます。
もちろんお客様とお店の方、見学場所で解説される方との間に立って通訳をする場面は出てきます。
仮に誰かの間に立って通訳をすることになったとしても、そのまま会話を訳すということはほぼなく、例えばネガティブな発言であれば少し和らげて訳しますし、このまま訳しても背景がわからないと通じないだろうなと言う際には補足してお伝えします。
また、旅程の段取りや添乗員業務もこなすのも仕事の一つ。次に立ち寄る場所には両替できるところがあるか、喫煙所は?お手洗いは?など「訳す」ことにとどまらない仕事が盛りだくさんです。
私は仕事柄、ガイドの必要性をよくわかっているので自分が観光する時にもよく現地ガイドさんをお願いします。淡々と事実だけを語る修学旅行的ガイドさんもいれば、面白いネタをたくさん持っていてお寺一つにしても話を上手に膨らませ聞いてる方を楽しませてくれるガイドさんがいたり。通訳案内士の仕事は断然後者でなくてはならず、そこにお客様のお国柄への理解、配慮などを付け加え、長時間マンツーでいても苦痛に感じない工夫も必要になってきます。これが一番難しかったりするのですが...。
一般的な通訳と通訳ガイドの仕事の性質の違い、おわかりいただけたでしょうか。
まとめ
現状において無資格で通訳案内士として報酬を得ることはできないので無資格アルバイトとしてこの仕事を探すことは不可能ですし、通訳ガイドの仕事の性質上、全くのスキルなしで単発のアルバイトを探すことは難しいでしょう。
まず手探りながらも仕事の経験を積みたい、という方は待っているよりもご自身のツアーをご自身で売っていくことが良いのが良い経験になるのではないかと思います。
また、まだ資格を取得されておらず仕事を体験してみたいと言う方はまずはボランティアから始めてみて、通訳案内士がご自身の性格にあった仕事なのかを知ることも大切かと思います。