通訳案内士の仕事がきたら研修はしてもらえるの?

無事、通訳案内士資格は取得したものの、今までボランティアガイドなど経験されたことのない方にとってはお仕事自体どう進めるものなのかわからない方も多いと思います。

事実、通訳ガイドの仕事は旅行会社からの案件であっても、多くの仕事のように仕事の流れを確認しながらの研修があって、一人立ち、というフローが必ずしもあるわけではありません。

それぞれの会社のルール等のオリエンテーションや事前確認はあったとしても、実際のガイディングで「この場面で話すこと」、「ここで確認すること」などは会社によって教えられるわけではなく基本的にガイドさんにお任せです。

特にFITの場合は行程もお客様によって変わりますし、当初の予定が変更になることもよくある話。

つまり、通訳ガイドの仕事にマニュアルはほぼ存在せず、案内する内容はガイドさん一人一人の力量に委ねられる、という結構すごい世界です。知識だけでなく、お客さんのマネジメント、旅程管理も任せられるので、緊急時のサポートはあるとしても基本的にガイドさんが行程の全てにおいて対応することになります。

これは新人さんであったとしても同じですので、新しく通訳案内士になられた方が相当緊張&パニックになる気持ちはよくわかります。

 

旅行会社さんからの依頼がどんな感じでくるかの例でいえば、例えば箱根ですと

9:00  都内ホテルピックアップ、バスで移動

10:30 大涌谷到着 黒たまご茶屋までハイキング

11:30 XXで昼食

13:00 彫刻の森美術館

17:00 都内ホテル帰着

18:00 XXで夕食

20:00 ツアー終了、解散

 

なんて感じのスケジュールと既に会社側で手配済みのバスのドライバーさんの連絡先やレストラン情報などが送られてくる程度で、時間もスタートと解散の時間しか記載されていないこともよくあります。もちろん移動の時間、間をもたせる話を考えるのはガイドの仕事ですし、「ここでこんなことを話してください」といったご丁寧な研修やマニュアルがある会社は

とてもとても稀です。

ふふふ...かなりの事前予習が必要になってくることは想像できますね。

そして考えれば考えるほど、自分の知識が足りない!!と焦るのがこの仕事です。

 

通訳案内士研修って何するの?

そんな迷える通訳案内士を救うのがそれぞれ通訳案内士団体などが行っている研修です。

ガイド団体のホームページをみると、様々な研修を開催されていて面白そうなものがたくさん出てきます。

通訳案内士の研修といっても種類は以下のように様々あります。

 

新人研修  

多くの場合2−4日間かけての研修。空港の送迎から最低限の乗務員知識、現役先輩通訳案内士の模範ガイドなど、「通訳案内士とはどういう仕事なのか」のイメージができるようになるもの。そこそこいいお値段とります...。

 

エリア別研修

東京1日研修(浅草、新宿都庁、明治神宮、特定の博物館など)、日光1日研修、箱根1日研修など、よくツアーが催行されるエリアでどんなことを説明したら良いかなど実際に観光地を回りながら学ぶもの。

 

テーマ別研修

多くは日本文化に関しての知識を深めるもの。禅とは何か、歌舞伎、日本食、茶道、日本人の宗教観などお客様との会話の中で取り上げられやすいトピックをより深く説明できるようにするもの。

 

スキルアップ研修

発声方法や異文化マナー講座、英語でのプレゼンテーションレッスンなど。

 

体験型ツアー研修

相撲部屋の見学、茶道や着付け体験などの短い体験型ツアーを担当するための研修。

 

などそれぞれが趣向を凝らしてガイドさんが必要としている研修を提供しています。

 

通訳案内士が受講しなくてはいけない研修はある?

通訳案内士の仕事をするにあたり、資格取得後に受講義務がある研修は存在しません。

また通訳ガイド団体に登録する上でも、研修受講が必須条件というところはほぼありません。(ガイド団体自体はまだ免許取得前であっても登録や研修に参加はできるところがほとんどです。)

ただ、自身の足りない知識を補うために、効率よく学べるのはやはり研修ということになります。予備校の問題集が必要なところだけ集めてくれているものに似ていますね。どちらの研修も今までのガイド経験に基づき構成されているます。

 

今回この記事を書くにあたり通訳案内士研修に力を入れておられることで有名な

NPO法人GICSS研究会所属ガイドのY.Aさんに私の個人的な疑問に答えていただきました。

 

吉田:旅行会社でもここまで丁寧な研修はなさそうですが、やはりこれは研修が個人の自腹になるからなんでしょうか。何年所属しようと全て自腹...ですか?

Y.Aさん:旅行会社も国も研修をやっていないのがほとんどなので、現在ガイド組織がその役を担っているのが現実です。

研修は仕事ができるようになる、あるいは実力をアップさせるための自分への必須教育投資、ということで研修費を払うのは受講者です。

何年GICSSに所属していても、あるいはベテランさんでも研修を受講する際はご本人が支払います。

吉田:GICSS入会にあたって必ず受けなくてはいけない研修などありますか? 

仕事を受けるためには新人研修やインバウンド旅程管理研修はマストですか?

また、新人研修はその年に合格した方のみ対象ですか?合格してから何年後か後であっても受講は可能なら、私受けたいです(笑)

 

Y.Aさん:入会に当たって必ず受けなければいけない研修はありません。

ただ、GICSSとしてはインバウンド旅程管理業務研修の受講は他の研修よりは強くお勧めしています。

通訳ガイドの仕事内容が旅程管理業務を兼務することが多く

場合によっては”旅程管理主任者の資格を持った通訳ガイド”と条件がつく仕事も増えてきているのでその資格の取得を勧めているからです。

インバウンド旅程管理業務研修は旅程管理主任者資格を取得するための講義の一部となります。(旅程管理主任者資格を取るにはその他、幾つかの講義とバス実習を受けなければなりません)

新人研修は通訳ガイドとして必要なスキルを総合的に学べるので新人はもちろんのこと

中堅のガイドも受講可能で、たまに中堅ガイドさんの姿を見ることがあります。

 

吉田:こちらでお仕事をするにあたり、例えばこのツアーを担当する際は事前にテーマに沿った研修を受けていないとお仕事はもらえない、などの段階を踏む必要がありますか? 

 

Y.Aさん:GICSSから直接仕事がいくことはありませんが、併設されている㈱ランデルズから仕事の斡旋があり、仕事をもらうにあたって何か段階を踏まなければならないということは特にありません。

その人のそれまでの経歴や、研修時の成績や態度(適性)から仕事を依頼するようです。(これらはGICSS理事長、兼、㈱ランデルズ社長のランデル先生が判断されます。

やはり旅行会社にガイドを派遣するにあたり、きちんとした人を送らないとその後の仕事に響きますので。)

新人でもそれまでのキャリアがすばらしい人やガイドとして向いている方はすぐに仕事をもらうこともあるようです。

ただし年間を通じた一部の業務については勉強会と審査を経て、合格すれば採用となるシステムがあります。(たまに例外もありますが)

吉田:結局のところ、多く研修に参加した人の方が仕事をもらいやすいのでしょうか?

Y.Aさん:必ずしもそうとは限らないですが、研修に多く出ている人の方が実力を認めてもらい、

仕事を斡旋してもらえる確率は高くなります。

吉田:初めて研修を受ける人へのアドバイスはありますか?(選び方のポイントなど)

 

Y.Aさん: 個人的な意見ですが・・・

・研修費で判断せず色々な団体の研修を受講してみること。

(GICSSは一流の方に講師を依頼する等の理由から研修費が高くなる傾向があるとのこと)

・新人研修の場合はガイド団体の説明会に参加すること。特に新人研修は数日間にわたる研修なので説明会に参加して研修内容をよく検討、また慎重に団体を決める必要があると思います。多くのガイド仲間の評判も集めることも大切です。

・受講する際も出来れば受け身ではなく積極的に(ex.予習、質疑応答時間では質問する)参加する。GICSSでは講師はその道のプロを招くので質問には答えてくれるはずです。

吉田:GICSSの研修の一番の目的はどこにあるのでしょうか? 会員の最低限のクオリティを揃えるのが狙いでしょうか。

Y.Aさん:「会員の最低限のクオリティ」というよりは「通訳ガイド全体のスキルをあげる」ことが目的です。

㈱ランデルズを経営しているランデル理事長が「どのような通訳ガイドが現場で求められているか?」という時代時代で変わる現場の要望を研修に反映し、その要望に応えられる通訳ガイドを育成するのがまず目的の1つ。

また、通訳ガイド個人では習得出来ない技術と情報と勉強の場を提供することが二つ目の目的です。

 

まとめ

通訳案内士の資格はとったものの、実務まではフォローしてもらえないのが通訳ガイドの現状です。最初から誰のサポートも借りずにガイドを始めることももちろんできますが、講師の方や先輩ガイドから学んだことは必ず自分のガイディングに生きてきますし、自分では思いつかなかった言い回しなどとても参考になります。

とはいえ研修ばかりで頭でっかちになるだけでなく、研修を活かせるように同時に自分からツアーの経験を積んでいくことも必要です。